中原中也が康子という女性を評して、彼女は「俺の柿の葉十三枚だ」と語ったことがあります。この言葉の意味を明らかにすべく、
四半世紀ほど前に買った大岡昇平の『中原中也』を探し出してきて読んでみたのですが、結局「柿の葉十三枚」の意味はわかりませんでした。
この大岡昇平の本を読んでいますと、中也の東京での交友がしばし語られています。中也と小林秀雄との「微妙な関わり」は知っていましたが、
交友関係の要に「青山二郎」なる人物がいたらしいということがようやくわかってきました。青山二郎とは誰か…。
本の中ではかなりの趣味人と見受けられましたが、あいにく僕はその名前に馴染みがありません。家内に聞くと「装幀家じゃないの?」
との返事でしたが、「ただの装幀家ではない」ことは容易に想像できます。
そこで新たな課題「青山二郎」を究明すべく、書店で『青山二郎全文集』(上下二巻、ちくま学芸文庫)を見つけて手に入れました。
「中原中也」つながりで手に入れた本ですので、まず中原中也への追悼文を目で追ってしまいます。
夭逝した中也は一流の文学者との交友が広かったせいか、今に伝えられている追悼は「ありきたりの弔辞」などではありません。
一人の人間の死に際しての文章としては少々不謹慎なのではないかというくらいにユーモアに富んだ味のある文章が多くあります。
中也という友をなくした者の飾らない感情が吐露されている文章を読んでいますと、「在りし日」の中也がよみがえってきます。
ところで、青山二郎とはどのような人物かはこれから読み解くことにします。
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