本の虫という言葉がピッタリだった自分にとっては、自分が読む本ではなく、子どもが読む本を選ぶこと自体楽しいことです。自分が子どもだった頃は「あれも読みたいこれも読みたい」という贅沢な悩みでしたが、今子どもの本を選ぼうとするとアラ探ししているかのように「あれも良くないこれも良くない」という消極姿勢になってしまいます。
新作絵本が玉石混淆であるのは当然だとしても、日本の昔話や世界の名作童話なども是非読ませたいと思えるものが少ないのです。たとえば「アリとキリギリス」のようによく知られた寓話でも、「アリが働いているときにキリギリスは歌を歌って遊んでいた」というウソが前提となって書かれているわけです。日本で出版されている物語は結末を穏やかに変えていますが、真偽や価値の判断ができない子どもたちに対して、自然界の小さな命の営みを擬人化・矮小化し、価値の独断的注入を行うという本質に変わりはありません。物語の作り方としても、子どもの育て方としても、どちらの見地からも問題があると思われます。(ここまで否定する必要はないと思いますけれど…。)
それから古典的名作の中には思ったよりずっと「残酷な話」が多いのです。年少の子どもに分かりやすくすると言う意図があるのかも知れませんが、物語を自分の頭の中にイメージすると正視に耐えないくらい怖い話がたくさんあります。
というようなことを考えながら書店で本を選ぶと、なかなか思うような本が見つからないのです。そこで、講談社文芸文庫『日本の童話名作選 昭和編』を買ってみました。幼児には読めないのですが、これを読んで聞かせるとか、僕自身のアレンジを入れて平仮名だけで書き直すとか、いずれにしても手間がかかりますね。(苦笑)