OECDの国際学力調査結果が報じられました。日本のランキングは高くありません。(2004年12月7日付『日本経済新聞』 大阪本社版夕刊1面) 前回の調査では「1位グループに属している」という少々苦しい文科省のコメントが付けられていましたが、今回は 「トップレベルとは言えない」という見解が示されています。社会面には東京大学の苅谷剛彦さんのコメントが載せられています。 「イギリスなどと同レベルの階層社会」であるという指摘です。
僕が思うに、問題であるのは「現在のランキング」ではなくて、「長期低落傾向にある」点及び「生徒間の学力格差が拡大している」 点です。高度経済成長を支えてきたのは人材であったはずです。その成長と競争力を維持するための人材は、供給不足となっているわけですね。 これまでの日本が高い学力の人材によって支えられてきたとすると、今後の我が国の将来を楽観することは出来ません。僕は、 低下しているのは学力だけではないと感じています。社会の治安も悪くなっていますし、マナーの悪さも目立ちます。無論、 積極的社会貢献をしている人々も多くなりましたが、「人間性」という点でも「格差が拡大」しているということでしょうか。
学校の教育機能を改善するための取り組みはすでに開始されたようですが。地域や家庭の教育力はどのように改善したらよいのでしょう。 今のままでは子どもの両親の学歴や社会階層が子どもに「再生産」されてしまうことになりはしないでしょうか。一定数の「エリート」 を確保すれば人材は確保できるかも知れませんが、良質の社会環境は担保されません。 学力以外の部分を含めた包括的な改革がなされる必要があります。 かつて先進諸国の調査団が感心したような国民全ての知的水準の底上げを図ることはできないのでしょうか。
この時期に義務教育費の国家支出が削減されるということは、我が国の公教育のレベル向上を期待することは出来ません。 教育という営みに深い理解がある家庭、公民としての資質の向上に心をくだいている私塾はあるでしょうけれど、あくまで少数派です。 子どもの学力水準が義務教育によって維持できないのであれば、富裕層の子どもでなければ、十分な教育が出来ません。
1)義務教育費の国庫負担を維持すること
2)教員待遇改善によって、有能な人材を教育界に迎え入れること
改善するべきことはこれのみでは不十分ですから、次の記事で具体的ケースを取り上げてみたいと思います。
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