ふとしたことで、ドラえもんの声優さんたちが総入れ替えになるというウワサを聞きました。複数のソースで確認しましたところ、 どうやら来春をメドに交代があるらしいですね。テレビでドラえもんを見たことは少ないのですが、大山のぶ代さんと「ドラえもん」 は切り離しがたく結びついています。静香ちゃんの声が66歳、 ジャイアンが70歳といった具合に主要メンバーが全て60代後半から70代になっています。 今まで後継者が出なかったのが不思議なくらいですね。そのうち「サザエさん」の声優さんの交代話も出てくるのでしょうか。
僕自身は「テレビ版のドラえもん」の「ストーリー」に対して批判的な気持ちが強いのですが、ドラえもんに出てくる「原っぱ」 という空間はとても重要なものであったと思っています。30数年前の僕の子ども時代には、確かにあのような遊休地があり、 子どもが自由に遊びに使うことができました。今は使い方自由の空間などはなかなか見つかりませんし、 仮にあったとしても子どもの命の安全すら保証されません。このありふれた人間形成空間の回復は、なかなか困難なことであると思います。
とくに設えられたものではない「原っぱ」の中で、子どもは遊びを創意工夫し、人間関係を調整する経験を重ねます。 そのことが具体的にどんな能力の向上を助け、それが社会にとってどのように役立つのか示すことは難しいのですが、 子どもの成長にとっては欠くことのできないものであると思っています。このデジタル社会にあっては、「何の役に立つのか明示できない」 ことは「何の役にも立たないこと」と等価にされてしまいます。「何の役に立つのか明示できないこと」を排除してきた結果が、 この理不尽な社会を出現させたと思えてなりません。付け加えれば、「どういう害があるのか明示できないこと」 を放置してきたことも大人の責任ですね。
注)教育哲学者の堀内守さんがかつて『原っぱとすみっこ』(黎明書房)という書の中で、「原っぱ」 の人間形成機能を考察していたと思ったのですが、今はこの本は絶版らしく確かめることができませんでした。