現在の住居に移り住んでから2年半ほど経ちました。そのときは当然電話番号も変わり、空いている番号を使うことになりました。
?鈴木さんのお宅でしょうか?
引っ越した当初は「間違い電話」など気にも留めていませんでした。以前この番号を使っていた人への電話であると思ったからです。
この手の間違い電話は時間とともに減少していくのが普通ですが、「鈴木さん宛」間違い電話は減る気配を見せません。
電話をかけてくる方の年齢性別は多様です。かかってくるたびに「この電話番号は2年前から私が使っているのです」と伝えましたが、
間違い電話発生ペースに変化はありません。
「いったい鈴木さんという人はどんな人なのだろう」、「どうして自分の電話番号変更を周知しないのだろう」と、
疑問に思いつつ月日が流れました。
本日、家電量販店で年賀状用プリント紙を購入する際に、そのお店のポイントカードが手元にないことに気づきました。
ポイントカードを忘れたことを店員さんに言いますと、電話番号で検索してくれました。
僕の家の電話番号をレジに入力した店員さんは笑顔で言いました。
?鈴木様でいらっしゃいますね?
鈴木さん…? そう言えばウチにかかってくる間違い電話が「鈴木さん宛」ではありませんか。
僕は鈴木という名前ではないと店員さんに伝えますと、過去データから僕の氏名を見つけたようです。鈴木さんの会員登録は僕よりも新しい(!)
ので、古い僕のデータは抹消扱いになっていたようです。
鈴木さんは未だに間違い電話の元データを伝え続けている……。間違い電話が減らない理由がそれでわかりました。
これをどう考えるべきでしょう。無限の可能性の中から二つのパタンを抽出することにします。
パタンA 鈴木さんは「中途半端に用心深い詐欺師」である。電話番号を書く際には、デタラメを書けばいいのだが、
以前自分が使ったことのある番号の中から選んでしまう。これがアダとなって鈴木さんは後日検挙されてしまう。
パタンB 鈴木さんは「伝説の社長」である。10年前に会社経営を引退したが、一代で築き上げた会社のことが忘れられない。
自分が会社の主として活躍していた栄光の時代を懐かしむあまり、手が勝手に創業時代の「社長宅」の電話番号をなぞってしまう。
その番号は鈴木さんとともに歩んだ「幸福の電話番号」である。
パタンBを想定することにしましょうか。ちなみに鈴木さんの退任後も会社は発展を続け、
本社を東京に移転しているということでいかがでしょう?